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今さら聞けない!「給与のデジタル払い」によるメリットや導入フローを解説

更新日:2023/12/21

2023年4月から給与のデジタル払いが可能となりました。スーパーやコンビニ、飲食店などでは既に電子マネーや〇〇Payなどでの支払いが普及され始め、その利用率や需要も高まっていると言えるでしょう。
人事・労務担当としては、給与のデジタル払いが可能になり、自社での導入方法やメリットは把握しておきたいところです。
今回は、給与のデジタル支払いについての概要や背景、メリットや開始フローについて解説します。



給与のデジタル払いとは

給与のデジタル払いとは、企業が銀行口座等を通さずにスマホの決済アプリや電子マネーなどのシステムを用いて従業員に賃金を振り込むことを指します。
従業員への給与の支給は、各従業員の銀行口座に振り込むことが一般的です。これは、労働基準法では、賃金の支払いは通貨払いが原則ながら、労働者の同意を得た場合には、労働者が指定する銀行その他の金融機関の預貯金口座に振り込んで支払うことができるとされているからです。

2023年4月の法改正によって、銀行口座への振り込みだけでなく、給与のデジタル払いも可能となりました。

給与のデジタル払いが認められるようになった背景

厚生労働省のホームページ「資金移動業者の口座への賃金支払(賃金のデジタル払い)について」によると、キャッシュレス決済の普及や送金サービスの多様化が進む中で、資金移動業者の口座への資金移動を給与受取に活用するニーズも一定程度見られることを踏まえて給与のデジタル払いを可能とする
と発表されています。(※1)

2018 年時点では、世界各国の水準と比較すると日本はキャッシュレス決済比率が18.4%と低く、「2025年6月までに 4 割程度」という目標を設定。将来的には、世界最高水準の 80%を目指していくこととし、キャッシュレスに係る各種取組を進めています。
2023年3月に経済産業省のキャッシュレス推進室から発表された「キャッシュレスの将来像に関する検討会」のとりまとめによると、新型コロナウイルスによる外出制限でオンラインショッピングやフードデリバリーなどキャッシュレスの利用機会の多いサービスの拡がりによって「キャッシュレス決済比率」は、2021年には32.5%にまで高まっていることがわかっています。(※2)

こうした背景により、給与のデジタル払いが認められたと言えるでしょう。
※1:厚生労働省「資金移動業者の口座への賃金支払(賃金のデジタル払い)について」
※2:経済産業省「キャッシュレスの将来像に関する検討会」

給与のデジタル払いを取り入れるメリット

給与のデジタル払いは、キャッシュレス決済手段の一つである、いわゆる「〇〇pay」などといった厚生労働省が認めた資金移動業者の従業員の口座に支給することができる仕組みです。銀行口座を持たない日雇い従業員や外国人労働者、非正規雇用者などに対して、時間や手間をかけずに給与を支払うことができるようになるでしょう。
従業員は給与支給後、即時にキャッシュレス決済で支払いをすることができるようになります。
人材不足により、スキマバイトや多様な人材雇用が進んでいる昨今にとって給与のデジタル払いは、フレキシブルに働ける環境整備の条件の一つとなってくるかもしれません。

給与のデジタル払いに関する意見

正規雇用労働者にとって給与のデジタル払いに関する意見はさまざまです。

・今のところセキュリティ面などが不安なため利用する気にならない。
・支払いはキャッシュレスだが、引き落としは銀行口座だから今のままで良い。
・銀行口座が作れない外国人の為にデジタル給料を推奨するのか?

雇用形態の種類が多く複雑で働き方や場所、時間などにおいて人材が多種多様な企業にとって、給与支払い手段の幅が広がることはメリットになる一方、正規雇用で働く従業員にとっては、多くのメリットは得られない可能性があるのかもしれません。

給与のデジタル払いに対応するためには

厚生労働省の「資金移動業者の口座への賃金支払(賃金のデジタル払い)について」によると、以下のフローが必要とされています。(※3)

(1)令和5年4月1日から、資金移動業者が厚生労働大臣に指定申請が可能。
(2)申請を受け付けた後、厚生労働省で審査を行い、基準を満たしている場合にはその事業者を指定。この審査には、数か月かかることが見込まれます。
(3)各事業場で、利用する指定資金移動業者などを内容とする労使協定を締結
(4)その上で、従業員は賃金のデジタル払いの留意事項の説明を聞き、理解した上で、企業に同意書を提出。
この同意書に記載する支払開始希望時期以降、賃金を資金移動業者の口座で受け取ることが可能。

給与のデジタル払いは、賃金の支払・受取の選択肢の1つとなります。従業員が希望しない場合は、給与のデジタル払いを選択する必要はなく、これまで通り銀行口座等で賃金を受け取ることができます。また、企業は希望しない従業員に給与のデジタル払いを強制してはいけないため注意しましょう。
※3:厚生労働省「資金移動業者の口座への賃金支払(賃金のデジタル払い)について」

まとめ

給与のデジタル払いは、世の中のキャッシュレス決済をさらに促進するかもしれません。また、企業にとって給与の支払い体系がフレキシブルになることによって、スポット採用やスキマバイトでの人材採用や人材の確保の手続きコスト削減にも期待が高まります。
一方で正規雇用の従業員への影響や、動向も配慮しておく必要があるでしょう。
この機に企業単位で給与の支払い体系について、見直してみてはいかがでしょうか。

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