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ジョブ型雇用とは?メンバーシップ型雇用との違いやメリット・デメリット、導入フロー 

更新日:2023/11/01

近年、「ジョブ型雇用」が注目を集めています。その背景にはテレワークやフレックス制度等、時代の変化により働き方が多様化し、従来の人事評価制度の適用が難しくなってきたことが挙げられます。
では、「ジョブ型雇用」と従来の「メンバーシップ型雇用」では、何が異なるのでしょうか。

今回は、ジョブ型雇用とメンバーシップ型雇用の違いや、それぞれのメリット・デメリット、ジョブ型雇用の導入手順などを紹介します。

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「ジョブ型雇用」とは?

ジョブ型雇用とは、企業があらかじめ定義した職務内容に基づいて必要な人材を採用する雇用制度のことを指します。職務内容は職務記述書に明記され、従業員はその職務に適したスキルが求められます。
従来の日本企業の新卒採用では、あらかじめ職務を決めず、採用後に本人の志望や適性を見て配属先を決定する「メンバーシップ型雇用」が主流でした。そのため、「ジョブ型雇用」は日本では新しいシステムと捉えられがちですが、世界では古くからあるスタンダードな雇用制度と言われています。

「ジョブ型雇用」と「メンバーシップ雇用」の違い

「ジョブ型雇用」と「メンバーシップ型雇用」は対照的な考え方をします。
ここでは、それぞれの違いについて解説します。

ジョブ型雇用メンバーシップ雇用
職務内容職務記述書で決定
(専門職型)
限定しない
(総合職型)
賃金業務の市場価値で決定働き手の経歴や勤続年数が左右
標準的な採用形態経験者採用(中途採用)/新卒採用主に新卒採用(新卒一括採用)


「ジョブ型雇用」は、特定の業務に関するスキルや実務能力を重要視する雇用制度です。採用活動の時点で任せる職務を決定し、適した専門性の高い人材の採用を目指します。従来の「即戦力採用」の考え方に基づいた手法と言えるでしょう。
一方で、「メンバーシップ型雇用」とは、“仕事”に対して雇用されるのではなく、文字通り会社のメンバーになるという意味合いが込められた雇用制度です。採用活動の時点では職種を限定せず、企業が求める人物像にマッチするか、長く貢献する人材であるか、という観点を重要視します。
これまで日本の多くの企業が導入していた「終身雇用」や「年功序列」といった雇用システムは「メンバーシップ型雇用」に含まれ、日本独特の雇用慣行と言われています。

ジョブ型雇用が注目を集めている3つの背景

【1】経団連のジョブ型雇用推進

経団連第5代会長 中西宏明氏の「日本従来のメンバーシップ型雇用を見直すべき」という提言により、日本でもジョブ型雇用を推進する流れが生まれました。この提言は、日本企業の国際競争力を高めるためであることが予測されています。
実際にこの提言以降、日立製作所やKDDI、三菱ケミカル、NTT、資生堂など、日本の大手企業がジョブ型雇用へ移行するなど、さまざまな企業で導入が始まっています。

【2】専門職・業種の人手不足

近年、DXの推進により、AIなどのデジタルを活用した業務が増えています。今後あらゆる業種で取り組むべき新しい事業には、高い専門性を有する人材の獲得が必要不可欠になるでしょう。特に、IT系などの専門性の高い職種では、慢性的に人材が不足している傾向があります。最適な人材の獲得のためには、スキルや業務内容を重要視するジョブ型雇用がマッチするとされており、ジョブ型雇用を導入する企業の加増にも大きく影響をしていると考えられます。

【3】本格的なダイバーシティの導入

企業のダイバーシティへの取り組みが本格的になってきたことも、ジョブ型雇用が注目を集める背景の一つです。
近年は少子高齢化による労働力人口の減少により、若い労働力の確保が慢性的な課題となっています。そこで、企業は労働力不足の解消や変化が激しい時代を柔軟に対応していくために、多様な価値観を持った人材の確保が必要になっています。
育児や介護をしながら働く方や、ジョブ型雇用が主流である外国人労働者の受け入れを行う場合、日本で主流となっている「メンバーシップ雇用」よりも「ジョブ型雇用」の方がマッチするケースもあります。

ジョブ型雇用のメリット・デメリット

「ジョブ型雇用」を導入することにより、「即戦力人材の採用がしやすくなる」、「入社後のミスマッチを防止できる」などといったメリットが期待できます。
ここでは、対照的である「メンバーシップ型雇用」と比較をしながら、それぞれのメリット・デメリットについて詳しく紹介します。

ジョブ型雇用メンバーシップ雇用
メリット・専門的な人材の確保が可能 
・さまざまな働き方との相性が良い
・仕事内容などによる入社後のミスマッチの防止
・長期的かつ計画的な人材の育成が可能
・配置転換が可能
・新卒一括採用により、採用コストを抑えられる
デメリット・会社都合での異動や転勤、配置転換が難しい
・雇用条件が理由の人材流出が発生しやすい
・社員評価が年功序列になりやすい
・スペシャリストの育成が難しい


「ジョブ型雇用」は、あらかじめ職務内容などの雇用条件を明確に定めて募集を行うため、専門的な人材の確保がしやすいといった特徴があります。現在の事業に合わせて効果的な採用活動を行うことができるため、即戦力人材の獲得も見込めるでしょう。
また、ジョブ型雇用は「思っていた仕事内容と違った」など、入社後のミスマッチが生じにくいというメリットが挙げられる反面、終身雇用ではないからこそ、より条件の良い企業へ転職されてしまうケースも少なくありません。専門職として入社を考えている人材は、チームワークや組織の一体感を育みにくいといった傾向があり、長期的な人材の育成や組織への帰属意識の向上が課題となるでしょう。

一方で「メンバーシップ型雇用」は、長期雇用する代わりに会社の経営方針や育成などの観点から、部署移動や転勤などの人材の配置転換を行うことができます。また、長期にわたって同じ企業、同じ組織で働き続けることで、企業のメンバーであることへの自覚が芽生えやすい特徴があります。その結果、チームワークの強化や計画的な人材の育成が可能となるのです。
さらに、春に新卒者を一括で採用する新卒一括採用を行うことにより、短期間でまとめて採用活動を行うことができるので、中途採用や通年採用と比較してもコストの削減が見込めるでしょう。

上記メリット・デメリットより、どちらの雇用制度も一長一短であることがわかります。
どちらが良い、悪いではなく、それぞれの特性を理解したうえで自社にとって最適な雇用制度を選択しましょう。

ジョブ型雇用の導入フロー

ジョブ型雇用に移行する場合、雇用制度に連動する採用手法や評価、給与などの制度も変更を行う必要があります。そのため、いきなりジョブ型雇用へ移行することは難しいと言えるでしょう。スムーズな移行を行うためには、検討フェーズから導入フローを把握しておくことが必要です。

【1】組織全体の職務内容分析

ジョブ型雇用に移行をする前に、現在の組織全体の仕事内容を分析し、職務に分解する必要があります。従業員一人ひとりの職務内容が明確にできていない状態では、ジョブ型雇用への移行は難しいでしょう。まずは現状の全ての職務と職務要件の明確化を行うことが重要です。

【2】職務と職務要件の定義

ジョブ型雇用を行う職務の内容を具体化します。職務名称、目的、内容、責任の軽重、職務範囲などの要素から、必要資格やスキルなどの職務内容を明確に定義しましょう。また、すでにある職務であれば現場の担当従業員と面談を行う等、認識の違いが生じないようにすることが重要です。

【3】等級の決定(評価制度の構築)

ジョブ型雇用は職務の能力に応じて報酬を支払うシステムのため、年功序列で評価を行っていた企業の場合は評価制度を見直す必要があります。専門的人材がスキルを発揮しやすく、さらにスキルアップをしていける環境を整えるためにも、成果に対して定量的に、細かい基準の設定を行いましょう。

【4】賃金の決定(賃金制度の構築)

給与額の設定をする際は、市場価値に見合っているかどうかも意識する必要があります。雇用条件が他社よりも劣っていた場合、条件の良い企業に転職されてしまうリスクが高くなります。職種や役職、責任の軽重を鑑みて、適切な給与額の設定を心がけましょう。

【5】ジョブ型雇用導入の社内周知

ジョブ型雇用制度を導入する場合、評価制度等にも変更が生じるため、既存社員に対して説明を行う場を設ける必要があります。ジョブ型雇用が適用される社員と、既存の正社員の間で不公平感が生じないよう、導入意図や雇用条件について丁寧に説明を行うことが重要です。

まとめ

「ジョブ型雇用」は、勤続年数に比例した評価制度ではなく、職務や責任の軽重に応じて評価を行う雇用制度です。多くの日本企業が導入している「メンバーシップ型雇用」と比べて、専門的人材の獲得がしやすく、柔軟な働き方との親和性も高いため、導入を進める企業が増えています。
しかし、雇用の流動性がまだまだ低い日本では、従来のメンバーシップ型の方が企業の強みを発揮できるケースもあるでしょう。
「ジョブ型雇用」と「メンバーシップ型雇用」は対照的な雇用制度だと言われています。それぞれのメリット・デメリットを把握したうえで、自社に適している雇用制度を導入することが望ましいでしょう。

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