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更新日:2023/12/21
2022年8月1日、中央最低賃金審議会(厚生労働省の諮問機関)は、2022度の最低賃金の目安を全国平均で時給961円にすると発表しました。
政府は2017年に策定した『働き方改革実行計画』において、「年率3%程度を引き上げ、全国加重平均1,000円を目指す」といった方針を掲げていることから、今後も最低賃金の引き上げが行われると予想されます。
今回は、人事が知っておくべき最低賃金の基礎知識や、最低賃金の引き上げによって企業が受ける影響を詳しく解説します。
目次
最低賃金とは、「最低賃金制度」により定められた労働者に最低限支払わなければならない賃金の下限額のことを指します。
最低賃金制度は、最低賃金法を基に労働者の生活の安定や質的向上などを目的に定められています。また、生活の安定による労働能率増進を図り、国民経済の健全な発展に貢献することも目的とされています。
最低賃金の対象は、毎月支払われる基本給と諸手当です。ただし諸手当のうち、通勤手当や残業手当、家族手当などは最低賃金の対象とはなりません。具体的には、以下の賃金を除外したものが最低賃金の対象となります。
また、最低賃金は雇用形態や給与形態に関わらず、働くすべての人に適用されます。出来高制で支払われる賃金についても、最低賃金を下回ることはできません。給与設定時は、最低賃金と時給を比較し、最低額以上であることの確認を徹底しましょう。
(1) 時間給制の場合
時間給≧最低賃金額(時間額)
(2) 日給制の場合
日給÷1日の所定労働時間≧最低賃金額(時間額)
※ただし、日額が定められている特定(産業別)最低賃金が適用される場合には、
日給≧最低賃金額(日額)
(3) 月給制の場合
月給÷1箇月平均所定労働時間≧最低賃金額(時間額)
※厚生労働省 【最低賃金額以上かどうかを確認する方法】
地域別最低賃金とは、都道府県別に定められている最低賃金です。産業や業種を問わず、すべての労働者に適用されます。
特定最低賃金とは、特定の産業や職業に設定されている最低賃金です。最低賃金審議会が、地域別最低賃金よりも高い金額水準の最低賃金が必要と認めた産業に設定されます。地域別最低賃金と特定最低賃金の両方が適用される場合は、高く設定されている最低賃金額以上を支払わなければなりません。
特定最低賃金の対象として定められているものは、厚生労働省の ホームページ から確認ができます。
使用者(企業)は、最低賃金の適用を受ける労働者に対し、最低賃金額以上の賃金を支払わなければなりません。いかなる理由があっても、最低賃金未満の賃金しか支払わなかった場合には、最低賃金額との差額を支払う必要があります。また、地域別最低賃金額以上の賃金額を支払わない場合には50万円以下の罰金(最低賃金法40条) 、特定最低賃金額以上の賃金額を支払わない場合には30万円以下の罰金が定められています(労働基準法120条第1号) 。
仮に、労働者と使用者双方の合意の上で最低賃金額より低い賃金を定めていても、それは法律により無効となり、最低賃金額と同額の定めをしたものとされます。
「知らぬ間に法律違反となっていた」ということを防ぐためにも、毎年改定される最低賃金の確認を徹底しましょう。
最低賃金引き上げの影響を受ける企業は増加しています。デメリットやリスクを事前に把握しておくことで、受ける影響を見積り、必要な対策を講じましょう。
最低賃金が引き上がることで、正社員とアルバイト・パートの給与差が縮まり、正社員の働くモチベーションが下がってしまう可能性があります。モチベーションの低下は、労働生産性の低下や離職率の悪化などにも繋がりかねないため、社員に意欲を持って働いてもらうための施策を練ることも重要となるでしょう。
最低賃金の引き上げに伴い、労働者一人当たりの給与を上げた場合、企業が負担しなければならない人件費が増大します。人件費が膨らむと、それ以外のコストを見直さざるを得ないため、新たな従業員の確保が困難になるでしょう。また、従業員数や雇用時間の見直しが必要となる場合もあります。少ない人数、短い労働時間でも業務が回るように改善できれば、労働生産性の向上を図ることができるでしょう。
最低賃金とは、国が定めた最低賃金制度に基づき、労働者に最低限支払わなくてはならない下限額のことです。時間外労働手当や賞与などは最低賃金の対象にはなりません。最低賃金額を下回った額を支払っていた場合は、罰則の対象になるため注意が必要です。また、最低賃金の引き上げは、人件費の上昇に留まらず、正社員のモチベーション低下を引き起こす可能性があります。
リスクを避け、労働者とより良い関係を築くためにも、企業は毎年の最低賃金改定額を確認したうえで給与の見直しを行うことが重要です。