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更新日:2023/11/01
近年AIやロボットなどのデジタル技術の発展が急激に進み、ビジネスの形は大きく変化しています。激しい競争社会の中で企業が成長していくためには、DX分野への事業参入や新たなデジタル技術の導入、業務の効率化などが必要不可欠でしょう。
しかし、デジタル人材が不足している日本で、デジタルスキルを保有した人材の確保をすることは容易ではありません。そこで多くの企業から注目を集めているのが、企業自らがデジタル人材の育成を行う「リスキリング」です。
本記事では、2022年度の流行語大賞にノミネートされ、政府も強く推進する「リスキリング」の概要や導入方法について詳しく解説します。
目次
「リスキリング」とは、AIやDX推進に伴い、今後新たに発生する業務で必要とされる知識や技術を習得するための取り組みのことを指します。
今までも社会人になってから学びなおし、新たな知識やスキルの取得を促す取り組みはありましたが、その目的や学習分野はそれぞれ異なります。
リスキリングの一番の特徴は、次代を見据えて、企業が従業員に戦略的に学ぶ機会を与えるものであるということです。リスキリングは、企業が新たな時代を生き抜くために取り組むべき人材戦略と言えるでしょう。
リスキリング | リカレント教育 | OJT | 生涯教育 | |
目的 | DXスキルの習得 | 学習 | 社内既存の知識やスキルの共有 | 豊かな人生を送るため |
学習分野 | デジタル分野 | 担当業務の分野 | 担当業務の分野 | 仕事外の趣味やスポーツも含む |
機関 | 自社や民間企業 | 大学等の教育機関 | 所属組織 | 特定の機関無し |
リスキリングが社会に浸透した1番の理由として、「DXの推進」が挙げられます。近年では、SDGsや新型コロナウイルス感染症の影響などにより、企業に求められる技術のレベルは高くなっています。企業が競争力を強化するためにはDXの推進が不可欠となっているのです。
しかし、DXに関するスキルを持った人材が不足している日本では、新たな人材を確保することは容易ではありません。そこで、社内にいる人材を企業自らが育成する手法として、多くの企業から注目を集めたのが「リスキリング」です。
求められるスキルも変わっている近年、新たなスキルを取得するリスキリングの必要性が高まっているのです。
従業員のスキルアップにより、企業は多くのメリットが得られます。ここでは、社内で「リスキリング」を実践することで企業が得られる効果を解説します。
新しい人を採用するとなると、費用や時間、労力がかかります。さらに、社内のDX化に貢献できる知識や技術を持った人材の採用が目的となると、採用ターゲットは狭まり、採用活動も難しくなるでしょう。しかし、従業員にリスキリングを実践することで、自社が求めるスキルや能力の充足を社内で図れるため、採用コストを抑制することが可能となります。
従業員のよくある転職理由として、「スキルアップのための転職」が挙げられます。
しかし、組織に属しながら、新しい知識や技術を身につけていけると感じた従業員は、スキルアップを理由とした転職を控える傾向にあります。企業はリスキリングを実践し、従業員が自主的に学習する機会を提供することで、優秀な人材の流出を防ぐことができるのです。さらに、リスキリングの推進により、従業員一人ひとりのキャリアビジョンを描きやすくすることができるため、エンゲージメントの向上効果も期待できるかもしれません。
これまで社内で活躍してきてくれていた人材をリスキリングすることによって、新規事業の立ち上げや既存事業の拡大につながる可能性があります。リスキリングを行い、従業員が新しい知識やスキルを習得することで、従来にはなかったアイデアの創出が期待できるのです。
デジタル技術の発展が急激に加速している近年、従来の価値観にとらわれない発想が新たなイノベーションを生み出す可能性を秘めています。社内に新しい風を吹き込むという面において、企業がリスキリングを実践するメリットは大きいと言えるでしょう。
リスキリングを推し進めることで、業務フローの改善や効率化につながることも企業が得られるメリットの1つでしょう。特にデジタル化を行うことによって、業務の自動化や工数の削減につながり、本来専念すべき業務や新たな事業、取り組みへ時間を割くことが可能となります。つまり、リスキリングを行い、個人の生産性の向上やスキルアップを図ることにより、従業員は効率的に業務を行うことができ、企業は既存の人材を今まで以上に有効活用することができるのです。
リスキリングは、自社が求めるスキルや能力の充足を図るための手段であり、あくまで実施することが目的ではありません。リスキリングの対象が、自社に求められる人材要件を満たすものでなければ実施をしても意味がないのです。
そのため、まずはリスキリング対象は「どの部署なのか」、「どのようなスキルが不足しているのか」を定めることが重要です。
一口に「企業のDX化に貢献できる人材」と言っても、企業によって必要なスキルや能力レベルは異なります。自社の経営戦略や人事戦略を踏まえ、対象者の人物像を明確にしましょう。
現状を把握しなくては、リスキリングを実践しても十分な効果を得られているのか、判断することはできないでしょう。まずは新たに取得してほしいスキル分野を明確にするため、従業員の保有しているスキルや知識と、企業側が求めるスキルや知識にどの程度ギャップがあるのかを測定することが重要です。また、場合によっては、従業員にどの分野のリスキリングに興味があるかをヒアリングしても良いでしょう。学習分野や方法を幅広く用意しておくことで、従業員は自身に合ったリスキリングを選択でき、学びの促進にもつながります。
新たな業務に必要なスキルや知識と、現在従業員が保有しているスキルや知識のギャップを埋めるための学習プログラムを設計します。自社でプログラムを作成するケースもありますが、企業によっては外部コンテンツやプラットフォームを活用するケースも多いです。求めるレベルや目的は企業によって違うため、適しているプログラムもそれぞれ異なります。「リスキリングに取り組む従業員が効率よくスキルや知識を習得できるか?」を基準にプログラムを作成することを意識しましょう。
リスキリングは学習プログラムを提供し、受講してもらうことが目的ではありません。スキルを習得した人材が、実際の業務で成果を出せるようになるまで確認を行いましょう。スキルの可視化は容易ではないため、現場とうまく連携を進めながら効果検証を行う必要があります。まずは簡易的な作業から始め、徐々に実践的な業務へ移行する流れを作ると、スキルアップを実感しやすいでしょう。また、実践の結果に対するフィードバックの機会を設けることも重要です。
株式会社キラメックスが行った調査によると、リスキリングの悪かった点について「まだ効果を実感できていない」と回答した企業が37.0%と最多でした。(※2)
この調査より、リスキリングを実践し、短期間で成果を上げることは難しいと言えます。企業は効果が出るまで時間がかかることを理解し、継続的に取り組める仕組みづくりを行うことが重要なのです。
また、対象となる従業員のモチベーション管理も、企業が注力すべき項目の一つです。プログラム設計も重要ですが、本人の「スキルを身につけたい」という意識がなければリスキリングは成功しません。「リスキリングに取り組む従業員向けのインセンティブを設ける」、「業務時間内に学習時間を設ける」、「リスキリングに取り組む従業員のコミュニティをつくる」など、従業員が意欲的に学習に取り組める環境を整備することが、リスキリングを成功させるうえで大きなポイントとなるでしょう。
※2:株式会社キラメックス 「企業のリスキリング実施に関する調査」
デジタル化の発展が急速に進む現代において、企業は変化に対応できる“デジタル人材の確保”が求められています。しかし、人材不足という慢性的な課題を前に、スキルや知識を持った新たな人材の獲得は、現実的に難しいと言えるでしょう。
そこで多くの人事・採用担当者が目を向けているのが、既存人材のスキルアップ(=リスキリング)です。リスキリングは従業員のスキルアップだけでなく、離職防止や採用コスト削減、さらには新事業やサービスを生み出すアイデアの創出などの影響をもたらします。しかし、一度の短期の実施で効果を実感できないこともあるため、長期的に継続することが大切です。
企業がDX時代を生き抜くためには、新たな人材の確保だけでなく、従業員の人材育成に目を向ける必要があるのです。